まえがき

 私がジャンヌダルクと出会ったのは何時の頃だっただろう。もはや記憶はおぼつかないが、それはもうかなり昔のことだ。

 それから年月が経ち、私はすでに彼女の人生以上の時間を生きてしまった。果たして彼女より長い私の人生は、彼女以上の意味を持っているのだろうか。いや・・・。

 もちろん、普通の人間以上の人生を送ったからこそ、彼女は聖女として称えられているのであろう。ならば彼女の、ジャンヌダルクの人生を追体験してみようではないか。感動、勇気、恐怖、苦痛。それらすべてを我々も味わってみようではないか。そこから何かをつかめるかも知れない。

 小説は面白い。映画でもなくゲームでもない小説だからこそ描けるものが、表現できるものがある。ジャンヌダルクと共に泣き、笑いながら一つの物語を完成させたいものだ。

 私の描く物語は、彼女の全てを忠実に描いたものではないかもしれない。有識者から見れば、笑いものになるだけかもしれない。

 しかし、それでも物語を書き記している間、私は彼女と共にフランスの大地を駆け巡る。その小さな想像力の中で。

 ”悪魔”ジル・ド・レが祈り、”愛しの”アランソンが駆け、”怒りの”ラ・イールが吠える。”乙女”ジャンヌを取り巻く敵と味方。敵が味方となり、味方が敵となる。

 共に夢見ようではないか。最高のスクリーンは目の前にはない。あなたの心の中にこそ存在する。どんな映画よりも鮮やかに、どんなゲームよりも自由に、あなたのスクリーンに描き出してほしい。

 私の作品が、その台本になることができれば、この上なき幸いである。


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